ERでの教訓

岩田充永先生がERで研修医に語った教訓を紹介します!!

2017.1.4 【2016年まとめ】

Unstableな患者への鎮静、気管挿管で留意すべきこと

Airway:挿管できなかった時のplan Bを考えておくこと

循環動態:見かけのBP保たれていても鎮静でいっきに血圧が下がるリスクを理解しておくこと

V:血圧 I:循環血液量 R:末梢血管抵抗 C.O:心拍出量 HR:心拍数

V=I×R

I=C.O×HR

鎮静によってR↓↓、HR↓⇒BP↓↓↓

(プロポフォール、ドルミカム、フェンタニルどれを使っても…)

 

対策:どんなにBPが保たれていても鎮静によって急激に低下するリスクを念頭に置くこと!!

・血管収縮薬(Nadなど)スタンバイ

・輸液ボーラス

 

内因性カテコラミンが亢進して、見かけ上の血圧が保たれている(高値になっている)場合が多い、背後に血管内容量の減少がある際は特に要注意!!

 

ERでのvital sign評価の注意点

・頻拍を痛み、不安、アルコールが原因と決めつけるな!!

 SBP<HRは危険

 微熱(37℃台)で心拍数>100は何かおかしい

・失神患者の頻拍、軽度のSpO2低下(SpO2変動に要注意)→肺塞栓の可能性

SpO2の数値だけで呼吸状態を評価しない(Ⅱ型呼吸不全)

・意識障害では血圧に注意

SBPが低いのを生理的と決めつけない。Lacのチェックを!!

 

☑インフルエンザ型の発熱(高熱、focal signなし)、今日は元気で明日ショックのパターンに注意

・細菌性髄膜炎

・壊死性筋膜炎(溶連菌、ビブリオ、フルニエ、エロモナス・ハイドロフィラ)

toxic shock syndrome

・心筋炎(BP低め、頻脈、呼吸数増加)

・急性胆管炎

 

※ステロイド、糖尿病は嫌な感じ

4日以上続く発熱、貧血、出血傾向の2つ以上揃ったら急性白血病も疑う

☑高齢者のマロリーワイス症候群やコーヒー残渣様嘔吐は背後に重病の影あり(頻回に嘔吐があった証拠)

☑頻回の嘔吐をきたす隠れた重病

・頭(小脳、頭蓋内圧亢進)

・胸(AMI、大動脈解離)

・腹(腸閉塞、精巣捻転、卵巣捻転)

・アシドーシス(乳酸、DKAAKA

 

☑悪魔は細部に宿る

ERでのエラーは高度な手技や判断を誤ったのではなく、基本をおろそかにしたときに生じる!!

多忙時の1人での投薬、処置、確認を怠った時が危ない

誤投薬、誤挿管、NG誤挿入、「まあ大丈夫でしょう」という思いこみ

 

ERでマグネシウム異常を考慮すべき事態

・酸化マグネシウムを長期投与されている高齢者の脱力、意識障害、倦怠感⇒高マグネシウム血症

・著しい低カリウム血症⇒低マグネシウム血症(血中マグネシウム濃度が正常でも補正を開始すること)

 

☑失神や一過性意識障害から回復した後に何か症状を伴う場合は、特に血管疾患(SAH、大動脈解離、肺塞栓症)を考慮すること

頭痛、頸部痛、胸痛、嘔吐、呼吸困難…

 

☑高齢者の突然の行動異常はせん妄を考慮すべし!!

せん妄の背後に重病の影あり

・感染症

・急性心筋梗塞、急性大動脈解離、急性心不全

・薬剤の有害事象

・低血糖、高アンモニア血症

を除外すべし

 

☑アルコール多飲患者、依存症患者の意識障害で考慮すべき病態

・頭蓋内出血(外傷も含めて)

・高アンモニア血症

・低血糖

・ビタミンB1欠乏

・電解質異常(低ナトリウムなど)

・アシドーシス(AKA

 

lactateはクリアランスが大切

lactateが上昇している(≧3mmol/L)はcriticalな病態を考慮すべき

・ただし、飲酒、てんかん発作後、β刺激薬吸入でも上昇を認める

・これらの影響と決めつけることは危険

・初回に高値であったら時間をおいて再度検査すること。改善がない、上昇傾向であれば何か重篤な病態を見落としていないか再評価を

 

☑見逃しやすい脳梗塞のパターン(片麻痺がはっきりしない)を知っておくこと

・上肢のみ(手だけのこともある)の麻痺:中心前回の梗塞

・口唇周囲と手掌だけのしびれ:視床や中心後回の梗塞

・短期記憶障害:海馬領域の梗塞

・失語(認知症やヒステリーと間違われやすい):優位半球注大脳動脈領域の梗塞

・体幹失調(歩かせてみないとわからない):小脳虫部(PICA領域)の梗塞

・視野障害:後頭葉の梗塞

 

☑木片の異物混入はCTX線では検出が難しい(空気のように黒く抜けるだけ)

検出にはエコーが有用

 

☑突然の後頸部痛に要注意

・突然の後頸部から後頭部の痛みではSAH

・突然の後頸部正中の痛みでは頸髄硬膜外血腫を

・突然の後頸部側方の痛みでは椎骨脳底動脈解離を

考慮すること

 

☑高齢者のsepsis(septic shock)の原因

呼吸器、尿路、胆道系、皮膚、中枢神経に加えて下部消化管穿孔を考慮すること

 

☑高齢者の救急受診 重症疾患でも症状が非典型的で1回の診察では確定診断が難しい。

症状によって

  ADL低下あり

  経口摂取できない

  酸素投与が必要

のいずれかに該当する場合は、入院を考慮すべき

 

☑メチャクチャ痛がる腹痛に要注意

  消化管の穿孔・穿通を見逃していないか?(free airの再チェック)

  急性膵炎を見逃していないか?

  動脈解離を見逃していないか?

SMAceliacなど大動脈の分枝に注意

激痛→軽快→激痛の経過に注意

下痢、嘔吐があっても惑わされないこと(「急性胃腸炎にしては痛みが激しすぎる…」という感覚を大切にせよ)

 

☑高アンモニア血症の肝硬変以外の原因を知っておこう

・門脈-体循環シャント(portal-systemic shunt)

・尿毒症や腎障害

・細菌感染症 (特に尿路感染症)

・消化管出血や便秘

・てんかん発作

・バルプロ酸内服

 

☑脳動脈瘤破裂以外の知っておくべきくも膜下出血の原因(つまり膜下出血で脳動脈瘤が確認されない場合に考慮すべき病態)

・外傷

AVM

・静脈洞血栓症

 

☑血圧低値(具体的にはSBP<110mmHg)の「脳梗塞疑い」では必ず大動脈解離を考慮すること

大動脈解離による神経症状は、経過中に症状の程度が変化することも多い(血圧低値のTIAも大動脈解離を考慮すること)

 

☑高齢者の皮質下出血ではアミロイドアンギオパチーを、若年者の皮質下出血では静脈洞血栓症を考慮すること

 

☑低体温症の初期診療で覚えておくべきこと

・基本的にバイタルサインはすべて下がる(血圧高値であったら脳血管疾患の検索を)

・ほぼ全ての症例に脱水を伴う

・電解質異常(特にカリウム)に注意:最初は脱水、高カリウム血症やがて急速に低カリウム血症となる

・復温中のVFに注意(特に3031℃の時点で)

・原因を検索すること

 敗血症(血液培養→抗菌薬投与+充分量の輸液を)

 偶発性(外傷、急病etc動けなくなった理由を探すべし)

 内分泌疾患(血糖、電解質に異常がある場合は副腎、甲状腺機能の積極的な検索を)

・外傷における死の3徴(低体温、凝固障害、アシドーシス)を知っておくこと:芸症患者は絶対に低体温にしないこと!!

 

 

 

2015.10.11.12月 

☑ERで緊急に脊椎MRI(胸椎、腰椎)を実施すべき事態

①  発熱+腰痛で骨髄炎、椎間板炎、腸腰筋膿瘍の可能性が除外できない時

②  尿閉+腰痛

③  急な神経症状or進行する麻痺+腰痛(脊髄での硬膜外血腫やくも膜下出血の可能性)

 

☑「IE(感染性心内膜炎)は遠きにありて思うもの」

・稀な部位の感染症(骨髄炎、膿瘍、椎間板炎)や若年者の脳梗塞を診たら感染性心内膜炎を考慮すること

 

・ERでフォーカス不明の発熱に抗菌薬を投与するのであれば、必ず血液培養を実施し、フォローアッププランを立てること。(改善しなければor悪くなったらまた来てください)はまずい!!」:最も悲惨な「よくわからない発熱(±CRP上昇)→とりあえず抗菌薬投与数日→よくわからないが解熱(±CRP陰性化)→同様の経過繰り返し2~3回→突然、心不全や脳梗塞で感染性心内膜炎と判明…」という展開だけは回避しなければならない。

 

☑消化管出血を診た時に考慮すべきこと

①    吐血による気道閉塞に備えておくこと(危険と考えたら躊躇なく気管挿管を)

②    現時点でバイタルサインが正常だからといって安心してはいけない。収縮期血圧正常から急速に血圧低下をきたす場合がある。いつでも(SBP120→100→80mmHgという具合に)徐々に血圧が下がっていくわけではない。出血性ショックを早期に認識するためには頻拍、脈圧低下、体位変化による血圧低下or心拍数上昇に敏感になること(ただし、高齢者や心拍数を低下させる薬剤を内服している患者では出血でも頻拍にならないことにも注意が必要)

③    ショックと診断したら輸血の準備を躊躇しない(大量輸液は凝固障害のリスク)血液型判定には20分、交差試験まで行うと40分かかる。間に合わなければO型輸血を

④    大量出血では食道静脈瘤破裂、大動脈-消化管瘻(大動脈瘤や大動脈手術後はハイリスク)を考慮すべし

⑤    消化性潰瘍による出血と判断したら緊急内視鏡の適応を判断(血圧低下、頻脈、ヘモグロビン低下、下血、心疾患の既往、肝疾患の既往などに該当すれば止血処置が必要な可能性あり)

⑥    緊急内視鏡では処置中に状態が悪化する可能性を常に念頭に置くこと!! 内視鏡を施行する医師にすべてを任せるのではなく、全身状態を把握する医師を配置するべき(手術における麻酔科医の役割)

⑦    本当に消化管出血か?喀血、口腔内出血、鼻出血の可能性はないか確認すべし

 

☑「何となく、傾眠傾向(ボーっとしている)…」で考慮すべき病態

・脳幹梗塞

・慢性硬膜下血腫

・電解質異常(高Na,低Na、高Ca血症)

・高アンモニア血症

・薬剤(睡眠導入薬、抗てんかん薬、抗うつ薬、向精神薬)

・CO2ナルコーシス

・低血糖(特にアルコール性、肝硬変患者の低血糖は緩徐に進行するため、血糖値が著しく低下しても昏睡にならないことがある)

・ビタミンB1欠乏

 

☑糖尿病性ケトアシドーシスの最大の死因は背後の誘因である。背後の7Iをチェックすること!! 7I:infection(感染症),infarction(心筋梗塞),ischemia(虚血性脳卒中),intoxication(中毒),ileus(イレウス),ignorance(治療への無理解),implantation(着床:妊娠)

 

☑失神をきたした患者では軽度のバイタルサインの異常(軽度に頻脈、軽度のSpO2低下etc)にも注意すること!! 肺塞栓症では失神+軽度のバイタルサイン異常しか認められないことも多い(Wells Ruleにも修正Geneva Scoreにも頻脈の項目が含まれていることに留意)

 

☑(特に介護度の高い)高齢者の座位での失神に注意

座位での入浴、下肢を温める、食事…自律神経機能が低下している場合、これらの状況で下肢や腸管に血流が多くなると相対的に脳血流が低下し、失神をきたす(神経調節性失神の一種)。直ぐに仰臥位にすれば回復するが、座位のまま放置すると心停止まで進行する危険あり!!(高齢者施設での心肺停止は食事時間帯に多いことが報告されている)

 

☑ERでは起立性低血圧が生じやすいことを理解すること

機序は2つ

①  高度出血(消化管出血や子宮外妊娠破裂)、高度脱水(急性胃腸炎などによる)による循環血液量の低下

②  副交感神経亢進による血管拡張(体位変化だけでも血管迷走神経反射が生じてしまう)

 

下痢嘔吐、失神、ふらつき、めまいなどの症状でERを受診した場合は仰臥位と立位で血圧や心拍数の変化を確認すること

 

 

☑急性冠症候群(ACS)は危険な病歴をマークすること!!

胸部症状+放散・発汗・圧迫・吐気はACSとして対応すること

高齢者のせん妄+発汗、糖尿病患者の倦怠感+発汗など胸痛を呈さないACSにも要注意

 

☑病歴からACSを疑ったら、心電図の所見で次のアクションを決定

・ST上昇や新規左脚ブロック→他の検査結果を待たずに、循環器医をコール(直ちにカテーテル治療)

・ST低下やT波陰転化→胸部症状あれば直ちに循環器コール、胸部症状落ち着いていればトロポニンの値を待って循環器医コール(カテーテル治療の時期は循環器医のスタンスによるので、CCU入室かカテ室に行く方向かを確認)

・虚血性変化なし→症状の再発、30分ごとの心電図、2~3時間後のトロポニンを再検

 

☑急性冠症候群を考慮して心電図検査、トロポニンを測定したのであれば、1回の心電図正常やトロポニン正常だけでACSを除外しないこと。可能であれば、2時間後にトロポニンの再検を!!

・トロポニンは不安定狭心症や非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)で治療の緊急性を判断する材料となるが、1回の測定でACSを否定できる材料ではない!!

・AHAガイドラインでは、30分ごとに心電図を実施して虚血性変化の確認と2-3時間後のトロポニン再検が推奨されている

・2時間後にトロポニンを再検して上昇を認めなければ、緊急PCIが必要なACSの可能性は非常に低いことが、種々の研究で示されている

 

☑時間単位で進行する咽頭痛(発症から数時間で受診する咽頭痛)に要注意!! 急性喉頭蓋炎の可能性あり

 

☑アナフィラキシーと判断してアドレナリン0.3mg筋注で効果がなかった場合は下記の病態を考慮すべき(2015.8.9月号先月号に追加)

・β受容体遮断薬の長期服用(→グルカゴンを使用)

・血管浮腫(→ACE阻害薬やARB服用歴を確認、気道管理とFFP投与を考慮)

・ヒスタミン中毒(サバなどの青魚を食べていないかチェック)

・toxic shock syndrome(発熱を伴っていないかチェック)

・輸液量が足りない(アナフィラキシーでの血管外漏出による血管内虚脱は非常に高度)

 

☑SpO2の数値だけで、急性呼吸不全の程度を評価しないこと!!

呼吸不全:PaO2≦60torrになる呼吸器系の機能障害

PaCO2<45torr:I型呼吸不全

PaCO2≧45torr以上:II型呼吸不全

 

<Ⅰ型呼吸不全の注意点>

☑酸素解離曲線はS状曲線であるため、SpO2≧90%の場合にはPaO2は急速に低下してもSpO2は緩徐にしか低下しないが、SpO2が90%未満となった場合は急速に低下する特徴がある(SpO2≧90%に呼吸不全の徴候を発見することが大切!!)

 

☑原因不明の呼吸困難、SpO2低下、呼吸増加では必ず肺塞栓症の可能性を考慮すること

 

☑SpO2は呼吸数とセットで評価すること

例えば患者の呼吸数28回/分でSpO2 95%あったら、「普通、呼吸数が28回/分もあればSpO2は99%か100%であるはずだ、SpO2が95%というのは低くないか? この状態が持続したら短時間でさらにSpO2低下する危険があるのではないか?」と考える必要がある。

 

☑酸素投与下で動脈血液の酸素分圧(PO2)が100mmHg以上の場合は、急速にPO2が低下してもSpO2は100%のままで呼吸状態の悪化の発見が遅れる危険がある。(SpO2 100%に安心するのではなく、呼吸数・呼吸状態の変化を観察することが重要)

 

<Ⅱ型呼吸不全の注意点>

☑SpO2低下が緩やかで背後でCO2貯留が進行しているⅡ型呼吸不全に注意!!

①慢性閉塞性肺疾患の急性増悪

②窒息

③神経‐筋疾患:脊髄損傷、ALS、ギランバレー症候群、重症無力症etc

Ⅱ型呼吸不全(room airでPaO2≦60torr、PaCO2≧45torr)ではA-aDo2を計算する。A-aDo2が正常であれば、神経・筋疾患、呼吸中枢の異常、胸郭変形などを考慮すること。

※A-aDO2=(713×FiO2-1.25×PaCO2)-PaO2、正常:年齢/4+4(10~15程度)

※Ⅰ型呼吸不全(room airでPaO2≦60torr、PaCO2以<45torr)ではA-aDO2は開大する

 

☑脊髄損傷患者では、呼吸障害のモニタリングはSpO2だけでは不十分。CO2貯留のリスクに留意すること

2015.8,9月 

☑D-dimer正常だけで肺塞栓症や急性大動脈解離を除外しないこと!!

・D-dimer正常で、肺塞栓症や急性大動脈解離を安全に除外できるのは臨床的に低リスクと判断できる場合のみ。

・肺塞栓についてはWells rule(簡潔版でOK)やADD (Aortic  Dissection Detection) risk scoreに準拠した診察でリスクの層別化が重要

 

※Wells rule(簡潔版)

①下肢の浮腫と深部静脈の圧痛

②肺塞栓が最も疑わしい

③頻脈(HR>100)

④過去4週間以内の臥床や手術

⑤肺塞栓症・深部静脈血栓症の既往

⑥喀血

⑦癌(過去6カ月以内治療、活動性)

該当する項目が1つまでなら肺塞栓症の可能性は低く(15%)、D-dimerが正常範囲内なら肺塞栓の可能性は非常に低いといえる(感度99.5%)Ann Intern Med 2011;154:709

 

D-dimerのカットオフ値は500μg/Lで固定せず、年齢を考慮したカットオフ値(50歳で500μg/L、51歳からは年齢 × 10 μg/L)を用いても安全(感度は下がらずに、特異度は上昇する)JAMA. 2014;311:1117.  BMJ. 2013;346:f2492.

 

※ADD risk score(Circulation. 2011;123:2213)

【ハイリスクな病歴】

Marfan症候群

大動脈疾患の家族歴

大動脈弁疾患を指摘されている

最近の大動脈処置

胸部大動脈瘤を指摘されている

【ハイリスクな痛みの性状】

「突然発症」、「激しい痛み」、「引き裂かれるような痛み」の胸痛・腹痛・背部痛

【ハイリスクな身体所見】

血流障害を示唆する所見(脈拍欠損、血圧差)+痛み

局所神経欠落症状+痛み

新規の大動脈弁閉鎖不全症を示唆する心雑音+痛み

低血圧やショック

 

ADD risk score 0+D-dimer<0.5μg/mL 感度100%、

ADD risk score≦1+ D-dimer<0.5μg/mL 98.7%(Intenat J Card 2014;175:78-)

という報告や

ADD risk score≦1 +D-dimer<0.5μg/mL 感度98% LR(-) 0.05 (Asha SE et al. Ann Emerg med 2015)というmeta- analysisがある

 

☑wide QRS tachycardiaで血行動態が安定しているからといって、(変更伝導を伴う)上室性頻拍と決めつけないこと!!心室性頻拍の70%は無症状あるいは血行動態安定という報告もある。これらの心室性頻拍は短時間で急速に血行動態悪化、心停止に至る危険あり!!

 

☑血行動態が不安定なwide QRS tachycardiaに対して緊急同期電気ショックで治療しただけで安心しないこと。背後の原因の検索を!!

・電解質異常:低K血症があればK補正と同時に背後のMg欠乏の補正も(血中Mgは体内総Mgの1%程度なので、血中Mg濃度が正常でもMg欠乏は否定できない)

・薬物中毒:三環系抗うつ薬(右軸変位、aVRでの高いR波)では重炭酸ナトリウムの使用や体外循環を考慮

・急性冠症候群:あれば早期にPCIを

 

☑血行動態が不安定なwide QRS tachycardiaに対して同期電気ショックが無効であった場合には下記を考慮すること

・高カリウム血症によるサインカーブ(→Ca製剤のIV)

・気胸や大量胸水(胸腔内圧上昇→心臓圧迫→不整脈の機序)

・中毒(三環系抗うつ薬など)

・変更伝導を伴う洞性頻拍(成人ではHR150を超えることは稀)

・同期電気ショックのエネルギー不足(通常、二相性除細動器なら100J、多形性VTなら200Jで、単相性除細動器なら200Jで)

 

☑ERで遭遇するAG開大性代謝性アシドーシスLAST DR

L:Lactic 乳酸アシドーシス

※正確にはL-乳酸アシドーシス、A型:組織への酸素供給低下あり(ショックなど)

                B型:組織への酸素供給低下なし(メトホルミン)

A: Alcoholic アルコール性ケトアシドーシス

S:Salicylic サリチル酸

T:Toxic 中毒(エチレングリコール、メタノール、鉄など)

D:Diabetic 糖尿病性ケトアシドーシス

R:Renal failure 腎不全による尿毒症

 

 

☑アナフィラキシーでは、アドレナリン筋注(成人0.3㎎、体重30㎏未満の小児0.01㎎/㎏)を積極的に実施すること。「蕁麻疹+α」があれば実施すべし

αとは…

気道症状(喉の腫れや痒み)

呼吸器症状(呼吸困難、喘鳴)

血圧低下(ふらつき、一過性意識消失)

消化器症状(腹痛、下痢)

 

アドレナリン筋注の副作用を恐れているほど多くない。高齢者でも心疾患患者でも躊躇しないこと(エピペンは、自分で「まずい!!」と思ったら自己注射しなさいと指導されているのだから)

 

☑ただし、アナフィラキシーの10~20%は皮膚症状なしで発症する。アレルゲン暴露から上記の「+α」に該当する症状が出現したらアナフィラキシーとして対応すること

 

☑アナフィラキシーと判断してアドレナリン0.3mg筋注で効果がなかった場合は下記の病態を考慮すべき

・β受容体遮断薬の長期服用(→グルカゴンを使用)

・血管浮腫(→ACE阻害薬やARB服用歴を確認、気道管理とFFP投与を考慮)

・ヒスタミン中毒(サバなどの青魚を食べていないかチェック)

・toxic shock syndrome(発熱を伴っていないかチェック)

 

☑海外のガイドラインでは、アドレナリン筋注で安定化したアナフィラキシーは数時間の経過観察後に帰宅可能と記載しているが、これはアドレナリン自己注射キット(エピペンなど)の処方が前提となっていることに注意。ERでアドレナリン自己注射の指導が一般的でない日本では経過観察入院が安全

 

☑アナフィラキシーでの気道確保は、difficult airwayであること認識しておくこと

・安易なRSI(Rapid Sequence Intubation)は要注意。喉頭浮腫や喉頭痙攣があると挿管困難に加えて、BVMによる換気も難しくなる

・awakeでの挿管の検討(ケタラールやフェンタニルを用いた)すること

・外科的気道確保の備え(輪状甲状靭帯の位置をマーキングしておくなど)もしておくこと

・自信がなければ、麻酔科医にあらかじめ連絡しておくこと

☑構音障害?他の症状なしの場合は、軟口蓋の浮腫などがないかチェックすること(あればアナフィラキシーやangioedemaの可能性あり)

 

 

2015.6,7月 

☑出血性ショックのバイタルサインの経過に注意すること

・消化管出血や外傷では現時点でバイタルサインが正常だからといって安心してはいけない

・収縮期血圧正常から急速に血圧低下をきたす場合がある。いつでも(SBP120→100→80mmHgという具合に)徐々に血圧が下がっていくわけではない。

・出血性ショックを早期に認識するためには頻拍、脈圧低下、体位変化による血圧低下or心拍数上昇に敏感になること(ただし、高齢者や心拍数を低下させる薬剤を内服している患者では出血でも頻拍にならないことにも注意が必要)

 

☑ERで高血圧症を診たら、

緊急で降圧が必要な病態か否かを判断すること

<ERで緊急に降圧を開始するべき病態>

・脳:くも膜下出血、脳出血、tPA適応脳梗塞(180/110mmHg以上)

・心臓:急性心不全症候群、急性心筋梗塞

・血管:急性大動脈解離

・妊娠高血圧症候群

・高血圧緊急症(高血圧により臓器障害が起こっている場合)意識障害や蛋白尿をチェック

緊急で降圧が必要ない場合も適切なフォローアッププランを立案すること

BP>160/110mmHgの場合は、(普段の血圧も高値であることも多く)不安や痛みなど一過性の要因と決めつけない。かかりつけ医への受診をすすめるべき。

 

☑急性の四肢麻痺で考慮すべき病態3つ

・ギラン・バレー症候群

・周期性四肢麻痺(低カリウム血症を伴うことが多い)

・頸髄病変

 

☑麻痺(運動障害)による高位診断

・四肢麻痺:頸髄レベル

・片麻痺:頭

・対麻痺:胸髄レベル

・単麻痺:末梢レベル

※例外として

・片側上下肢麻痺、顔面に麻痺なし:頸髄(特に硬膜外血腫や腫瘍など外からの圧迫でおこる)

・手、上肢の単麻痺:中心前回の梗塞

・下肢の単麻痺:前大脳動脈領域の梗塞

 

☑「急速に発症した下腹部痛+吐き気・嘔吐+発症から24時間以内に受診」というキーワードが揃ったら

・男性では精巣捻転を考慮

→精巣挙筋反射(あれば捻転の可能性は非常に低い)、片側の精巣が横たわっていないかをチェック(片側の精巣が横たわっている場合は捻転の可能性あり) Br J Urol Internat 2013;110:1201-

・女性では卵巣捻転を考慮

→エコーで腫大した卵巣をチェック.5㎝以上は特に要注意 Gyn Surg 2010;7:297-

 

☑「両手のしびれ」で受診する患者では、外傷歴をチェックすること。額をぶつけて頸部を過伸展するような受傷歴がある場合は中新世頸髄損傷の可能性が高い。中心性頸髄損傷では、運動障害に比べて感覚障害が強く、下肢に比べて上肢の症状が強い

 

☑アルコール多飲or常用患者の頻拍に要注意

アルコール多飲や離断症状による頻拍と決めつけないこと。高度脱水、アルコール性ケトアシドーシス、重症感染症、肺塞栓症、急性心筋梗塞、外傷による出血性ショックなど重篤(かつ治療可能な)な病態の可能性を検討すること

2015.4,5月 

☑急性冠症候群を考慮して心電図検査、トロポニンを測定したのであれば、1回の心電図正常やトロポニン正常だけでACSを除外しないこと。可能であれば、2時間後にトロポニンの再検を!!

・トロポニンは不安定狭心症や非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)で治療の緊急性を判断する材料となるが、1回の測定でACSを否定できる材料ではない!!

・AHAガイドラインでは、30分ごとに心電図を実施して虚血性変化の確認と2-3時間後のトロポニン再検が推奨されている

・2時間後にトロポニンを再検して上昇を認めなければ、緊急PCIが必要なACSの可能性は非常に低いことが、種々の研究で示されている

 

☑ERでのてんかん発作(seizure)評価の注意点

※てんかん発作(seizure)とてんかん(epilepsy)を区別して用いること

てんかん発作(seizure):大脳皮質の異常に同期した電気活動(原因は何でもアリ)

てんかん(epilepsy):seizureをきたす脳の疾患

強直性(tonic)間代性(clonic)の動きがないからといって、てんかん発作(seizure)ではないと決めつけてはいけない。

・部分焦点発作(focal seizure)では、側頭葉からおきる場合「ボーっと一点を見ている」「口をぺちゃぺちゃさせる」「記憶の錯乱」などの症状が認める

・前頭葉からおきる場合は「大声を出してうめく」という症状が認められる

用いる薬剤の特徴を理解しておくこと。

・ジアゼパム(セルシンⓇ、ホリゾンⓇ)やミタゾラム(ドルミカムⓇ)はてんかん発作(seizure)を停止させるための薬

・フェニトイン、バルプロ酸、フェノバルビタールはてんかん(epilepsy)を治療する抗てんかん薬(AED;anti epileptic drug)である。

てんかん(epilepsy)で抗てんかん薬(AED)を内服している患者のてんかん発作(seizure)で、AEDの血中濃度が低いからといって、安易に薬剤の増量だけで終わらせてはいけない。

・ストレス、アルコール過量摂取、睡眠不足などの誘因がなかったかをチェック(血中濃度が低くても、発作なく経過している人も多い。このような誘因がある場合は、薬剤の増量ではなく誘因除去が大切)

・最近追加された新しい薬剤はないかチェック(抗うつ薬や抗菌薬はAEDの血中濃度を下げるものある)

・背後に感染、低血糖、電解質異常の合併がないかをチェック

てんかん発作(seizure)によって生じた外傷の評価を忘れない

・舌咬傷

・鎖骨骨折、肩関節脱臼

・顔面外傷

・脊髄損傷(顔面強打による頸椎過伸展で生じることがある)

 

☑外傷患者の頻拍を「痛みや興奮の影響」と決めつけないこと

痛みや興奮で頻拍になっているのであれば、血圧も上昇しているはず

血圧上昇なく、頻拍を認める場合は出血性ショックの初期の段階の可能性が高い。必ず出血源(胸腔、腹腔、骨盤腔)の検索を!!

2015.1月 

☑失神は脳全体への血流障害で起こる。脳血流が35%低下する、もしくは5~10秒程度途絶えることで生じる

失神の原因として肺塞栓(心拍出量低下や神経調節性失神をきたすことによる)と大動脈解離(真腔の血流低下→頸動脈血流低下による失神)を忘れない!!(不整脈、出血、神経調節性、薬剤性の頻度が高いが)

 

☑動揺性の腹痛、意識障害、しびれや麻痺では大動脈解離を疑うこと

大動脈解離による真腔の血流低下→分枝動脈の血流低下による症状に敏感になること

これらの症状は真腔の血流に起因する症状なので、症状が動揺性である。

大動頸動脈の血流低下→失神

腹腔内の動脈の血流低下→腹痛

脊髄への動脈の血流低下→しびれ、麻痺

 

☑高齢者の尿閉では背後に抗コリン作用のある薬剤の服用が無いかを確認すること(総合感冒薬、過活動性膀胱治療薬など処方機会が増えている)。尿閉は尿路感染症や腎後性腎不全のリスクとなる

 

☑意思疎通が困難な高齢者の苦しそうな唸り声では、肩関節脱臼、消化管穿孔、急性心筋梗塞、尿閉などを考慮すること

 

☑家族の「入院させてください」の背後にあるのは「いつもと違う、何かおかしい」のか「介護疲労」なのかをはっきりさせること

家族の「いつもと違う、何かおかしい」は、隠れた重症を拾い上げる重要な医療情報

 

医療者は「入院させてください」と言われると、過剰な防御反応をとる可能性があるので要注意。介護疲労であれば、悩みに共感し適切な道筋をつけること(ケースワーカに相談etc)

 

☑小脳虫部(PICA領域)の梗塞は歩かせてみないと診断できない。体感失調のみで麻痺なし、指鼻試験や踵膝試験も正常。

・体幹失調は立たせなければわからない!! 

立位・座位を保持できない、tandem stand(semi-tandem stand)ができないめまいは要注意!! 小脳虫部(PICA領域)の梗塞精査を!!

・Rombergテストをチェック

 Rombergテスト

足をそろえて、腕を横につけて立つ→閉眼して5~10秒観察

開眼でできる→閉眼でできない:前庭性or脊髄性

開眼でも閉眼でもできない→小脳性

 

 

☑麻痺なし(orはっきりしない)なのに歩けない時の鑑別診断

・慢性硬膜下血腫

・正常圧水頭症

・小脳梗塞

・高アンモニア血症、電解質異常(ナトリウム、カルシウム)、尿毒症、低血糖、ビタミンB1欠乏、甲状腺機能低下症→意識障害よりも歩行障害が目立つこともある

・末梢神経障害、後索障害

 

☑鼻出血、口腔内出血、喀血、吐血では①気道閉塞による窒息と②出血性ショックに注意すること!! 特に気道閉塞は、少量の出血でも起こりうるし、急変の直前までSpO2が保たれている場合も多いので発見が遅れやすい(酸素投与下では特に)

 

☑呼吸不全の原因は肺や心臓だけとは限らない。Ⅱ型呼吸不全(room airでPaO2≦60torr、PaCO2≧45torr)ではA-aDo2を計算する。A-aDo2が正常であれば、神経・筋疾患、呼吸中枢の異常、胸郭変形などを考慮すること。

※A-aDO2=(713×FiO2-1.25×PaCO2)-PaO2、正常:年齢/4+4(10~15程度)

※Ⅰ型呼吸不全(room airでPaO2≦60torr、PaCO2以<45torr)ではA-aDO2は開大する

2014.10月 

☑急性大動脈解離、急性冠症候群の症状を理解しておくこと

・不安定狭心症では「胸が痛い」というよりも胸部の「不快感」を訴えることが多い。放散する、圧迫される、吐気を伴う、発汗を伴う「胸部不快感」は要注意!!

・ST上昇型急性心筋梗塞は数分かけて痛みがピークに達することが多く、ベッド上で耐え忍ぶような感じの痛がり方をする。それに対して、急性大動脈解離は急激に痛みを発症し、ベッド上でのた打ち回るような痛がり方をする。

・離れた部位で同時に症状を発症した場合(胸痛+α:胸痛+腹痛、胸痛+頭痛、胸痛+下肢のしびれ・脱力etc)は急性大動脈解離を考慮すること

・しかし、急性大動脈解離の7%は痛みなしの報告もあり。失神、血圧低値の脳梗塞症状、原因不明のショック、原因不明の心不全では必ず大動脈解離を考慮すべき

・ACS(特に心電図でⅡ・Ⅲ・aVFでST上昇を伴う下壁梗塞を疑う場合)で治療を開始する場合は大動脈解離の可能性がないかを検討すること

 

☑EF(駆出率)正常だけで急性心不全を除外しないこと。拡張障害による急速発症の肺水腫ではEF正常のことが多い。夜間に突然の呼吸困難で救急搬送される急性心不全はほとんどがこのタイプで、ニトログリセリンが症状改善に有効

 

☑乳酸アシドーシス(乳酸値の顕著な上昇を伴うアシドーシス)で考慮すべき病態

・臓器不全が相当進行したショック

・メトホルミンによる乳酸アシドーシス

・てんかん発作(多くは1時間以内に改善する)

・シアン中毒(火災現場から救出された場合は必ず血液ガスでCO-Hbで一酸化炭素中毒と乳酸値でシアン中毒の可能性をチェック)

 

☑「何となく、傾眠傾向…」で考慮すべき病態

・慢性硬膜下血腫

・電解質異常(高Na,低Na、高Ca血症)

・高アンモニア血症

・薬剤(睡眠導入薬、抗てんかん薬、抗うつ薬、向精神薬)

・CO2ナルコーシス

・低血糖(特にアルコール性、肝硬変患者の低血糖は緩徐に進行するため、血糖値が著しく低下しても昏睡にならないことがある)

 

・ビタミンB1欠乏

2014.9月 

☑自動車単独事故には背後に内因性疾患の影あり!! 「頭文字“S”8つ」の可能性をチェックすること

・酒(飲酒)

・精神に影響する薬剤(覚せい剤、危険ドラックなど)

・心筋梗塞

・Sugar(低血糖)

・Sleep apnea

・Syncope

・SAH

・Seizure

 

 

☑高齢者の「ふらつき」「意識混濁」では電解質異常(高Ca血症、高Na血症、低Na血症など)の可能性を考慮すること。骨粗鬆症治療の普及によって、活性型ビタミンD3製剤(+潜在性腎機能障害)による高齢者の高Ca血症が増加している

2014.8月 

☑ERで平常心を失わなければ、大きな間違いは犯さない

ERで発生するエラーの90%以上は「基本的なことをおろそかにして、論理的な診療ができなかったこと(それくらい平常心を失っていたこと)」に起因する。まれな病態を診断できなかったことや難しい手技ができなかったことに起因することは非常にまれである。

 

☑大腸閉塞は小腸閉塞とは比べ物にならない緊急事態と考えること

・大腸閉塞は閉塞が一か所でもclosed loop(ドレナージ不能な部分)となり(回盲弁が存在するため)、原則として緊急手術の適応となる

・短時間で穿孔(内圧上昇のため)や敗血症に進展してしまう(生体内の細菌の99%は大腸に存在し、内圧上昇でbacterial translocationをきたす)

・小腸閉塞は閉塞箇所が一か所であれば保存的治療が可能だが、closed loopが存在する(閉塞箇所が二か所以上)場合は手術適応

 

☑脳梗塞におけるtPA投与:発症4.5時間以内であれば、ゆっくりでよいというわけではない!!

発症1.5時間以内のtPA投与群は発症3-4.5時間での投与群よりも4倍治療成績が良好(BMJ 2014;348:g3429)。ERでは以下の項目を協力して迅速に行うこと

①    最終健常時刻の特定

②    血糖値チェック

③    NIHSSチェック

④    頭部CT施行

⑤    tPA投与禁忌のチェック

⑥    必要に応じた降圧

⑦    専門医へのコンサルテーション

⑧    さらなる画像検査の検討(CT-angio ? MRI?)

 

☑医学用語を混乱しないこと(けいれん?てんかん?)

・seizure(てんかん発作):てんかん発作という状態を示す用語。頭痛、腹痛、胸痛と同じ

・epilepsy(てんかん症候群):特に誘引なくてんかん発作を繰り返す疾患

・convulsion(痙攣):「てんかん発作以外のふるえ」「強直間代性てんかん発作」など多様な状態を表す言葉で、混乱を招くのであまり使用するべきではない

 

☑重症患者の移動中はリスクがいっぱい!!

酸素ボンベ:残量は充分か?バルブは開いたか?

モニター:バッテリーの充電は充分か?ケーブルが外れていないか?

輸液:残量は充分か?

輸液路:外れや捻じれはないか?

 

チューブ類(気管チューブ・ドレーン類):位置異常はないか?

2014.7月

☑非外傷性腹腔内出血、後腹膜出血の原因として下記の病態を考慮すること

(実質臓器か?血管か?女性器か?)

①   実質臓器、その周辺からの出血

・肝細胞がん破裂

・脾臓破裂(特発性)

・仮性膵嚢胞の破裂

・腎周囲出血(Wunderlich症候群;腫瘍や血管炎などからの出血)

②   血管病変(大動脈とその分枝血管の病変)

・大動脈瘤破裂

・SAM(Segmental arterial mediolysis)

・血管型エーラスダンロス症候群

・血管炎

③   女性生殖器からの出血

・子宮外妊娠破裂

・卵巣出血

 

☑ERで「何となく重症感かも…」と感じた場合は乳酸値を確認すること

・乳酸値上昇は「細胞の悲鳴」:乳酸値上昇は細胞に適切に酸素が供給されていないことを示唆する(例外:肝不全、てんかん発作)

・乳酸値上昇(動脈血で2.5mmol/L以上)があれば循環不全の可能性あり、慎重な経過観察と原因究明が必要!!

・静脈血でも代用可能(動脈血より0.2mmol/L程度高値)

・治療効果を判定するうえで、2~6時間ごとの乳酸値モニタリングが有用

(Good review⇒Scandinavian Journal of Trauma, Resuscitation and Emergency Medicine 2011, 19:74)

 

☑細菌性髄膜炎の診断は難しい

・「診断確定例の50%は24時間以内に受診歴あり(つまり半数は初診時には診断されなかった…)」という報告もあり。

・Kernig徴候・Brudzinski徴候・項部硬直→あれば髄膜炎の可能性が高くなるが、認められなくても髄膜炎を否定できない

⇒「疑う者は救われる」少しでも可能性を考えたのであれば髄駅検査を(血液検査と同じ感覚で髄液検査を!!)

 

 

☑細菌性髄膜炎の治療は以下の2パターンで考える

①細菌性髄膜炎を強く疑う

血液培養(2セット)→ステロイド静注(デキサメサゾン0.15㎎/kg 6時間ごと)+抗菌薬静注を迅速(来院60分以内)

②症状から少しでも細菌性髄膜炎の可能性を疑う(多分違いでしょう・・・も含めて)

積極的に髄液検査→軽度でも髄液白血球数の増加を認めた場合は(リンパ球有意であっても)細菌性髄膜炎の可能性も考慮して治療を開始

 

☑細菌性髄膜炎では侵入経路を検索すること

①    血行性(敗血症、膿瘍、感染性心内膜炎は?)

②    直接侵入(副鼻腔炎、中耳炎、歯髄炎、頭蓋底骨折は?)

 

☑泣き止まない赤ちゃん(Crying Baby)の診察では以下を探すこと

外傷:骨折(特に鎖骨骨折)、角膜びらん、hair tourniquet syndrome(足趾、陰茎など)、虐待

感染症:中耳炎、尿路感染症、髄膜炎、へルパンギーナなど

皮膚トラブル:おむつ皮膚炎、亀頭包皮炎、裂肛、虫刺され

腸の問題:腸重積、回転異常、ヘルニア

精巣:精巣捻転

 

☑急性虫垂炎の初期診療に強くなる(フォローアッププランを立てることが大切!!)

・発症初期は右下腹部痛を呈さない。典型的な経過は「心窩部痛→悪心・嘔吐→右下腹部への痛みの移動・圧痛→発熱→WBC増加」どの時点で受診するかは人それぞれ。

・虫垂炎を初診時に診断できないのが問題なのではなく、虫垂炎の可能性を説明しないことがトラブルにつながる

 

・合併症のない急性虫垂炎は、抗菌薬治療の安全性が示されている。⇒ERにおける画像検索で(エコーやCT)で虫垂の腫大や膿瘍を確認できないが、急性虫垂炎の可能性が残る場合は、その旨を説明して抗菌薬を処方しフォローアップの診察プランを立てておくこと


2014.6月

☑出血性ショックでは 通常、頻脈を呈するが、出血性ショックでも頻脈を呈さない状況があることに留意すること(頻脈ではないからといって出血性ショックを否定しないこと!!)

<ショックでも頻脈にならない患者群>

・高齢者(交換神経感受性が低下しており頻脈になりにくい)

・運動選手(代償機能が上昇しており頻脈になりにくい)

・β受容体遮断薬、カルシウム拮抗薬(ワソラン® ヘルベッサー®など)を服用している患者

・ペースメーカー患者

・低体温症の合併(バイタルサインはすべて低下する)

・脊髄損傷の合併

・激痛を呈している患者(副交感神経が亢進し、徐脈となってしまう。子宮外妊娠破裂で多い)

・交感神経緊張に拮抗して副交感神経が緊張し交感神経を追い越してしまった状態(心停止が近い危険な状態)

 

☑ERにおける急変対応の極意は「起こりうる最悪の事態を想定しておく」こと

・意識清明なAMI⇒突然のVF(手の届くところに除細動器の準備を)

・意識清明なAMI⇒突然の徐脈+ショック(経皮ペーシングの準備を)

・下壁梗塞にニトロ投与⇒突然の血圧低下(潜在的な右室梗塞合併の可能性あり。輸液負荷の心構えを)

・意識清明なSAH⇒再破裂によるVF(手の届くところに除細動器の準備を)

・意識清明なSAH⇒再破裂時の嘔吐+窒息(気道確保、鎮静・鎮痛・筋弛緩薬の準備を)

・薬剤投与⇒アナフィラキシーによる窒息・ショック(アドレナリン筋注の心構えを)

・吐血⇒窒息(気道確保の準備を)

・吐血⇒ショック。(通常は頻脈になる。徐脈になってきたら、交感神経緊張に拮抗して副交感神経が緊張し交感神経を追い越してしまった状態で心停止が近い!! アトロピン投与と輸血の準備を)

・A型急性大動脈解離で突然のショック⇒心タンポナーデ

 

 

2014.5月

☑救急外来での心房細動への対応の原則 ①症状は心房細動によるものか?

・患者の主訴が心房細動によるものか、何らかの原因(感染・発熱・脱水・心不全増悪など)によって心房細動になっているのかを検討すること。後者であれば心房細動への対応ではなく原因に対するアプローチが必要となる

 

②症状がAFによるものであれば、まずレートコントロールを実施(Ca拮抗薬などを用いる)してⅰ)レートコントロール+抗凝固かⅱ)リズムコントロールかを決定する

・レートコントロールだけで症状が消失してしまったら、普段から発作性心房細動発作を繰り返している可能性が高いので、レートコントロール+抗凝固が無難

・発症48時間以内、D-dimer陰性、左房径5㎝未満で、レートコントロールだけでは症状が消失しない場合はリズムコントロール(薬剤もしくは同期電気ショック)を考慮する

 

☑意識障害+縮瞳では①有機リン中毒、②脳幹(橋)出血・梗塞、③オピオイド過量、④薬剤による過鎮静を考慮し以下の項目をチェックすべき

・異臭はないか?気道分泌物過多は無いか?⇒あれば、有機リン中毒の可能性あり。アトロピンを静注し、コリンエステラーゼをチェック

・呼吸パターンをまねしてみる⇒呼吸パターン(リズム)に異常があれば脳幹(橋)出血・梗塞の可能性あり。気道確保・頭部CTを⇒呼吸パターン(リズム)に異常なければ薬剤による過鎮静の可能性

・尿トライエージ®をチェック ☑ERにおける電解質異常診療のエッセンシャルミニマム

・ERで徐脈、意識障害、脱力・筋力低下を診たら電解質異常を考慮すること

・徐脈では高カリウム血症をチェック ・意識障害ではナトリウムとカルシウムの値をチェック(可能なら血液ガス分析で)

・Na<120mEq/l+意識障害orけいれんの場合はERで補正を開始する(症状なければ緩徐に補正する)

・Caの正常値を知っておく:1.1-1.3mmol/l、2.2-2.6mEq/l、8.8~10.0㎎/dl正確にはアルブミン補正が必要、補正Ca値(mg/dl)=実測Ca値(mg/dl)+(4.0-血中アルブミン値)

・脱力・筋力低下を診たら低カリウム血症をチェック ・低カリウム血症を診たら、①心電図でQT延長をチェック②生化学検査でCPKをチェック(横紋筋誘拐症のチェック)③カリウム排泄亢進(利尿薬、下剤、ステロイドetc)か細胞内シフト(甲状腺機能亢進症、インスリンetc)かを判断、細胞内シフトであればカリウム投与は少なめに④高度の低カリウム血症ではマグネシウムも一緒に投与する(血清マグネシウムの値が正常でも)

・アシドーシスでは血清カリウム値は上昇する。pHが0.1低下する毎に血清カリウム値は0.6mEq/l上昇する。アシドーシス下で低カリウム血症が存在した場合は、高度のカリウム欠乏が疑われる

 

☑ERで尿閉を診た時のチェックポイント

・水腎症、腎後性腎不全のチェック ・薬剤(特に抗コリン作用を有するもの)、飲酒歴のチェック

・前立腺肥大症は指摘されていないか(前立腺肥大+飲酒のパターンが多い)

・泌尿器系の処置、検査歴はないか(長期尿道カテーテル留置され抜去後間もない、膀胱鏡検査など)

・脊髄のイベントは無いか?(特に若年者ではADEMや横断性脊髄炎、高齢者では悪性腫瘍の転移)

 

☑激しい腹痛で、腹部単純CTで異常を指摘できなかった時に考えるべきこと

・本当に腸管穿孔(遊離ガス)を見逃していないか

・本当に腸管の捻転を見逃していないか ・膵炎を疑ってp-アミラーゼやリパーゼをチェックしたか

・腹部以外の疾患を考慮したか(特に急性心筋梗塞や糖尿病性ケトアシドーシス) ・腸管虚血(NOMIなど)や大動脈およびその分枝血管の病変(血栓閉塞や解離)は造影しないと指摘できない。必ず造影CTを実施すること

2014.4月

☑妊娠中の尿路感染症に要注意!!

・妊娠中期~後期は子宮による尿管圧迫で解剖学的に尿流障害が発生しやすい→尿路結石や尿路感染症を発症しやすい。

・妊婦の尿路感染症の約15%が菌血症に、1-2%が敗血症性ショックに進行するため早期から積極的な治療が必要(無症候性細菌尿でも治療対象)

 

☑外傷では予測して動くことが大切

・多発肋骨骨折・Flail Chestの患者に気管挿管するのであれば胸腔ドレーンを予防的に挿入(他部位の手術、TAE中に緊張性気胸に進展することを防止する配慮を)

・意識障害があれば早期に気管挿管(嘔吐、出血による窒息の危険あり)を考慮

・輸液が2000mlを超す前に輸血が始められるように、早期輸血の適応を判断すべき(同型輸血では20分、適合試験まで行えば40分かかる。それまで待てないと判断するならRCCはO型、FFPはAB型を使用する)

・外科的手技に自信がなければ、骨盤骨折、腹腔内出血、下肢開放骨折からの出血コントロールのためのIABO(大動脈遮断バルーン)挿入を早期に考慮すべき。シースだけでも早期に大腿動脈から挿入しておこう

 

・ERで輸血までしないとバイタルが維持できない場合は原則として緊急止血術の適応。スタッフ皆でER滞在時間を長引かせない努力を!! 止血治療(手術やTAE)に1分でも早く繋げることが最重要!!!

2014.3月

☑ERで、目前の病態だけ対処して安心しないこと

・室内で低体温症→背後の敗血症、脳卒中、意識障害(鑑別はAIUEOTIPS)を見落としていないか?

・心不全→背後の感染症、急性心筋梗塞を見落としていないか?

・DKA→背後の7Iをチェック!! 7I:infection(感染症),infarction(心筋梗塞),ischemia(虚血性脳卒中),intoxication(中毒),ileus(イレウス),ignorance(治療への無理解),implantation(着床:妊娠)

・外傷→背後の内因性疾患(失神、急性心筋梗塞、脳卒中など)を見落としていないか?

・マロリーワイス症候群→背後の腸閉塞、DKA、AMI、小脳梗塞などを見落としていないか?

 

☑局所神経所見や筋力低下が明らかではない歩行障害や立位保持不能では下記の病態を考慮すること

・小脳虫部(PICA領域)の梗塞による体幹失調

・慢性硬膜下血腫

・電解質異常(低カリウム血症)

・高アンモニア血症

・ビタミンB1欠乏症

・低血糖

 

 

2014.2月

☑急変を早期に発見するために覚えておくべきこと「人間は脳に酸素が足りなくなると暴れる」

・人間は低酸素血症で暴れる(窒息、呼吸不全を見逃していないか?)

・人間は脳血流低下で暴れる(ショックの初期症状を見逃していないか?)

・暴れていた患者が静かになったら、いよいよ悪化のサイン(心肺停止が近い!!)

・ERでの患者の「あくび」は低酸素・脳血流低下の徴候と考えること(心肺停止が近い!!)

 

☑ERで患者が便意を催した時は危険なサインと考えること

交感神経が緊張しているところに拮抗して副交感神経も亢進、自律神経系の調節が乱れてしまった心肺停止が近い危険な状態

 

☑危険な腹痛のキーワードを覚えておこう

1.鑑別は「血管⇒腸管(破れる→捻れる→詰まる)」の順で考える

2.便秘症と診断した時は要注意(特に高齢者に自分が初めて便秘症と診断した場合)

3.高齢者の浣腸後の腹痛は要注意(大腸穿孔・大腸がんイレウス)

4.高齢者の排便中の腹痛は要注意(大腸穿孔・腹部大動脈瘤破裂)

5.「歩くと響く」「咳すると響く」「ストレッチャーで移動中に段差で響く」は要注意(腹膜刺激症状の可能性大)

6.Tapping Painは要注意!!(腹膜刺激症状の可能性大)

 

 

2014.1月

○処置時(外傷処置、脱臼整復、同期電気ショックetc)の鎮静は非常に便利だが、血圧低下と呼吸抑制に注意すること。

①    血圧低下:鎮静前に血圧が高値であっても、鎮静後に血管拡張と内因性カテコラミンの低下によって急速に血圧低下をきたすことがある。その際は輸液負荷、血管収縮薬(エフェドリン、ネオシネジン、ノルアドレナリン)で対応する

②    呼吸抑制:SpO2のモニタリングだけでは不十分。酸素投与可では、呼吸不全が相当進行しないとSpO2低下が認められない。SpO2低下の前に換気不全によるCO2蓄積が進行するリスクあり!! 必ず胸郭の動きなど呼吸状態を確認しておくこと

 

○見逃されやすい脳梗塞のパターンを知っておくこと

・上肢のみ(手だけのこともある)の麻痺:中心前回の梗塞

・口唇周囲と手掌だけのしびれ:視床や中心後回の梗塞

・短期記憶障害:海馬領域の梗塞

・感覚性失語(認知症やヒステリーと間違われやすい):優位半球側頭葉の梗塞

・体幹失調(歩かせてみないとわからない):小脳虫部(PICA領域)の梗塞

・テント下の梗塞:発症3時間以内では、MRI(拡散強調像)でも感度70%程度

 

○重症外傷における治療の失敗、原因の最多は「出血性ショックへの対応の失敗」ERでは5つの対応が重要

①    ショックの同定:血圧が低下する前に同定することが大切!! 外傷患者が頻脈、乳酸値上昇(2mmol/l以上)の場合はショックがあるものと考える

②    出血源の検索:胸・腹・骨盤など体腔(体表からは見えない部位)への出血を積極的に検索すること。ベットサイドでのポータブルX線(胸・骨盤)、FAST、早期のCT

③    輸血の必要性を判断:

・初期輸液で循環動態がいったん安定した場合も、再度悪化してくる場合あり(出血が持続している場合)、そのような場合は輸血が必要となる。

・出血量のすべてを輸液で補おうとしない。循環動態が維持できないと判断したら、細胞外液輸液量が2000mlを超える前に輸血を開始できるように対応することが重要。血液型だけ一致させた輸血製剤でも準備に20分(交差試験まで行えば40分)かかる。間に合わなければO型の濃厚赤血球製剤(RCC)を使用。大量輸血(8単位/時間)が必要な場合はFFPも使用すること(RCC:FFP=1:1が理想的)

④    緊急止血術の必要性を判断:循環動態の安定化に輸血まで必要となった場合は原則として緊急止血術(手術、TAEなど)が必要となる。早期に必要な科へのコンサルテーションが必要

 

⑤    低体温の予防:外傷患者に低体温症を併発すると非常に予後が悪くなる(アシドーシス、凝固障害の進展)。輸液は温め、体の保温に努めること!!

2013.12月

○治療抵抗性ショック(輸液やNAdに反応しないショック)では急性副腎不全の合併を疑うこと!! 迅速ACTH試験を行う

 

○バイタルサインに異常がない外傷患者はしつこく触診すること!! 痛がる場所には骨折の可能性がある。(骨盤骨折の検出には単純X線よりも身体診察のほうがすぐれている!!)

 

○高齢、心房細動(+)、動脈硬化性疾患(+)、経過中に痛みが全く改善しない、「側腹部~側背部の痛み、尿路結石?」では腎梗塞を考慮すべし(LDH上昇のチェックと造影CTを)

 

○ステロイド内服患者の発熱に要注意!! 必ず頻脈(HR≧90)や頻呼吸(呼吸数≧20/分)を確認しよう(頻脈や頻呼吸があれば敗血症の可能性あり!!輸液路確保と十分な輸液を。短期間で急速にバイタルサインが悪化してしまうことがある)

 

○ステロイド内服患者の腹痛に要注意!! 「血管が詰まる、腸管が破れる」病態を考慮しよう

 

☑中枢性めまいを見逃さない細心の注意を!!

・脳神経をチェック:Ⅷ(ハ)・Ⅶ(ナ)・Ⅴ(コ)・構語障害(コウ)・複視(フク)「花子幸福」と覚える

・構語障害は「パトカー」「メダカ」でチェック:Ⅶ(パ行、マ行:口唇くっつける)Ⅹ(カ行:軟口蓋くっつける)Ⅻ(タ行,ナ行、サ行:舌使う)

・小脳症状は小脳半球症状(指鼻試験、踵膝試験)と虫部症状(体幹失調)の両方を調べること

・体幹失調は立たせなければわからない!! 立位・座位を保持できない、tandem gaitができないめまいは要注意!! 小脳虫部(PICA領域)の梗塞精査を!!

 

☑経鼻エアウェイを挿入する際は鼻出血に細心の注意を!!

 

 

2013.11月

 

○ERでの心血管作動薬の使い方(簡潔なまとめ)

①    敗血症性ショック:NAdが第一選択。反応不良ならばバゾプレッシン(0.03-0.04単位/分)追加、HR↓・末梢血管抵抗↑、心原性ショックには使用しない

②    心原性ショック:NAd(+DOB)を使用する。DOAは不整脈が増加するので注意

③    アナフィラキシーショック:アドレナリン0.3㎎筋注、改善なければアドレナリン0.1㎎静注を考慮

④    徐脈性ショック:まず高カリウム血症と心筋虚血をチェック。

QRS幅が狭い徐脈では、アトロピン0.5㎎静注、改善しなければDOA2-10μg/kg/min or アドレナリン2-10μg/分

QRS幅が広い徐脈では、経皮ペーシングを考慮、循環器医にコンサルテーション

 

○複数の部位の症状(頭痛+胸痛、胸痛+腹痛、胸痛+下肢のしびれ、脱力etc)を呈している場合は大動脈解離の可能性を考慮すること

 

○単麻痺をきたす脳梗塞に注意!!:通常、単麻痺は下位運動ニューロン障害で生じることが多いが、中心前回部の梗塞で上肢の単麻痺を呈し、稀だが前大脳動脈の梗塞で下肢の単麻痺を呈する場合がある。

 

 

2013.9月

 

○ERでのイレウス治療

①    手術歴の有無をチェック

②    十分量の輸液

③    NGチューブによる減圧(NGチューブ挿入時は嘔吐・誤嚥・窒息に注意!!)

④    閉塞部位のチェック(大腸イレウスは早期に敗血症に至るので緊急性が高い)

⑤    絞扼、血流障害の評価(CT、乳酸値の上昇、アシドーシスのチェック)

 

○ERで突然発症の対麻痺を診たら…

①    大動脈解離のチェック

②    胸髄レベルの病変のチェック(脊髄炎、硬膜外出血、硬膜外膿瘍、脊髄梗塞etc)

 

○ERでニトログリセリンを使用する際は、急速に血行動態悪化をきたす状態に注意すること

①    SBP<90mmHg:さらなる血圧低下・血行動態悪化のリスクあり

②    HR<50/分:迷走神経緊張が亢進している患者では、血管拡張をきたして1回拍出量が低下しても代償性に頻脈になることができず著明な血圧低下・血行動態悪化のリスクあり

③    HR>100/分:頻脈状態の患者では、すでに最大限の代償状態の可能性があり、血管拡張をきたして1回拍出量が低下してもそれ以上に代償性に頻脈になることができず著明な血圧低下・結構動態悪化のリスクあり

④    右室梗塞を疑う場合:

・下壁梗塞の3分の1に合併する(Ⅱ,Ⅲ,aVFでST上昇を見たら右側胸部誘導をチェック→V4Rの感度88%、特異度78%)

・右室機能不全状態では、血圧と心拍出量を維持するためには右室充満圧の維持が重要。たとえ、血圧が保たれていてもニトロ投与で静脈拡張をきたすと急速に血圧低下をきたすリスクあり。

・250~500mlのボーラス輸液→改善しなければDOBによる右心収縮補助+NAd or DOAによる血管収縮

 

○ERで低K血症をみたら

①    原因を考える(排泄増加か?細胞内シフトの亢進か?):病歴、尿中カリウム濃度(TTKG計算)、甲状腺機能亢進症やカテコラミン過剰状態ではカリウムの細胞内シフトがおこる。SAHや外傷(特に頭部外傷)、ショックで低K血症を示していたら予後不良を示唆する。細胞内シフトが原因であるならば緩徐に補正すること

②    心電図でQT延長をチェック:QT延長を伴うような低K血症では血清Mgの値が正常であってもMgを一緒に補正すること。(血中には体内Mg総量の1%程度なので、検査値はマグネシウム欠乏を鋭敏には反映しない)

 

○アシドーシスでは通常高カリウム血症をきたす。低カリウム血症をみたら何かおかしいと考えること!!(pH0.1低下する毎に血清K値は0.6mEq/L上昇する)

例:意識障害 血糖20㎎/dl、pH7.12 K3.2という検査値を見たら、相当大量のインスリンを注射したことを疑う必要がある

 

○火災現場で煙に巻きこまれた環境から救出された患者では

①  気道熱傷の評価を行うこと

②  血液ガスでCO-Hb濃度をチェック(一酸化炭素中毒)

 

③  血液ガスで乳酸値をチェック(乳酸値の上昇はシアン中毒を示唆する)

2013年9月

  

 

○ベッド移動の軽い衝撃が急変を招く病態に注意すること

①  くも膜下出血→再破裂

②  急性心筋梗塞→心室細動誘発

③  骨盤骨折→大量出血

慎重に! 衝撃を最小限にする配慮を!!

 

○上部消化管出血を診た時に考慮すべきこと

①  吐血による気道閉塞に備えておくこと

(危険と考えたら躊躇なく気管挿管を)

②  ショックと診断したら輸血の準備を躊躇しない

(大量輸液は凝固障害のリスク)血液型判定には20分、交差試験まで行うと40分かかる。間に合わなければO型輸血を

③  大量出血では食道静脈瘤破裂、大動脈-消化管瘻(大動脈瘤や大動脈手術後はハイリスク)を考慮すべし

④  消化性潰瘍による出血と判断したら緊急内視鏡の適応を判断

(血圧低下、頻脈、ヘモグロビン低下、下血、心疾患の既往、肝疾患の既往などに該当すれば止血処置が必要な可能性あり)

⑤  本当に上部消化管出血か?喀血、口腔内出血、鼻出血の可能性はないか確認すべし

 

 

○一度の心電図や血液検査(トロポニン測定)だけで急性冠症候群の可能性を否定しないこと。

30~60分後に心電図の再検査(できれば120分後も)、可能であれば2時間後にトロポニンの上昇が無いかを確認しよう。

2013年8月

 

○早朝から午前中にかけて、40歳くらいまでの比較的若い男性が四肢脱力感で受診した場合は 甲状腺機能亢進症による周期性四肢麻痺を考慮すべき。TSHと血清カリウム値をチェック。カリウムは低下している場合も正常の場合も(まれに高い場合)もある。低カリウム血症の原因は細胞内シフトがメインなので、カリウム補正はゆっくり行うこと

 

○ERでの朝一番の引き継ぎ、「このまま外来受診予定です」に要注意!!

Sepsis、肺塞栓症、大動脈解離、脳動脈解離etc etc 静かに進行する(しかも、夜中の検査だけでは診断できない)疾患が隠れている危険がある

 

○高齢者の「動けない」など漠然とした訴えでは、「食事・トイレ・着替え・内服」に注目してADLを把握し、ADL低下のスピードを確認しよう(突然? 数日? 数週間? 数か月?)。血管疾患・感染症・変性疾患・腫瘍など原因を推定するのに有用なことがある

 

2013.6月

○突然の背部痛and,or突然の両下肢の脱力(一過性も場合も含む)では、大動脈解離と脊髄硬膜外血腫の可能性を考慮すること。CTで大動脈解離の可能性が除外できたら、脊髄MRIでの精査が必要。抗凝固薬内服患者は特に脊髄硬膜外血腫のハイリスクだが、内服していない患者でもAVMや腫瘍からの出血などで発症する場合がある

 

○抗凝固薬内服患者の転倒・腰痛では骨折が無くても慎重な経過観察が必要、受傷後数時間経過して、両下肢の麻痺などが出現してくることがある(脊髄硬膜外血腫)

 

○精神疾患患者の頻回の嘔吐では、腸閉塞・アシドーシス(アルコール性ケトアシドーシスなど)、水中毒による低ナトリウム血症を鑑別に考えること

2013.5月前半


○ 一過性両下肢脱力(対麻痺)では①大動脈解離、②脊髄(胸髄レベル)のイベント(出血や梗塞など)の順で考えること。痛みがないから、現在神経所見が改善しているからといって安心してはいけない(無痛性+一過性対麻痺パターンのA型大動脈解離は結構多い)。D-dimerが上昇していれば必ず大動脈CTで精査を(大動脈が正常であれば脊髄MRIを)

 

2013.4月後半

 

○過換気症候群について以下の3点を注意しよう

  呼吸数増加を安易に過換気症候群と誤診しないこと(DKA、肺塞栓症、ギランバレー症候群などが隠れている可能性あり)

  重篤な疾患により二次性に過換気症候群をおこしている可能性を考慮しよう(急性冠症候群、大動脈解離、SAHなど)40歳以上で初めて過換気症候群を発症することは非常に稀である

  Post-hyperventilation Apneaに注意(過換気の直後に無呼吸が出現。SpO2が著しく低下する場合もある)このような場合は安易な鎮静薬使用は呼吸抑制の危険がある。基礎疾患に転換性障害などを有していることが多い

 

○小児の肘外傷では上腕骨顆上骨折に注意!! X線で骨折線がはっきりしなくても、上腕骨後方にfat pad signが確認される場合は骨折と考えること。(骨折や炎症で液体貯留が起こり,骨に付着している脂肪層がはがれて初めて確認される。前方のFat padは正常でも観察される)

 

○加齢とともに出血(外傷・消化管出血etc)、低酸素血症(肺炎・COPD増悪・肺塞栓症etc)に続発する二次性急性冠症候群の発症率が高くなることに注意しよう。

・重篤な病態では心電図変化にも注意

・低酸素血症の是正(十分な呼吸管理、貧血の補正 Hb7-9g/dl程度)にも配慮すること

 

2013.4月前半 


○小児の頭部外傷ではPECARNを知っておこう

Identification of children at very low risk of clinically-important brain injuries after head trauma: a prospective study (PECARN) Lancet 2009;374:1160-70

 

 

○救急外来における輸液では以下の項目を検討しよう

  目的は?(体液を補う? 薬剤の投与経路? 経過観察?)

  カテーテルは?(大量輸液が必要であれば太くて短いカテーテルを選択する。流量はカテーテルの半径の二乗に比例し長さに反比例する)

  輸液セットは通常用(約20滴で1ml)か微量用(約60滴で1ml)か?

  輸液製剤は?

・血管内容量を維持したい→生理食塩水・細胞外液(1000ml輸液すると約250-300ml血管内に残る)

・カリウムフリーにしたい→生理食塩水・1号液を選択

・ナトリウムを制限したい→5%ブドウ糖液、3号液、4号液を選択

 

 

○脱臼・骨折転位の整復やヘルニアによる腸管脱出の還納、成功のカギはリラックスさせること。ERでの鎮痛・鎮静法に精通しておくべき

 

○危険な咽頭痛のキーワド「喉が痛くて、飲み込みにくい」に敏感になること

・口が開きにくい→咽後膿瘍の可能性あり

・口蓋垂・扁桃の偏位→扁桃周囲膿瘍の可能性あり

・前頸部の圧痛→急性喉頭蓋炎の可能性あり

仰臥位になれる状態であれば、頸部CTで確認を

仰臥位になれない場合は、気道閉塞が近い緊急事態!!

 

2013.3月後半

 

○交通外傷(特に未成年者の場合)、保護者・家族への対応にも特別な配慮を行うこと(丁寧な説明、頻回の声かけetc)家族を思う不安・心配は容易に怒りへと転化することを理解しよう。

 

○一過性意識障害では…

  syncopeseizureの鑑別が重要

・舌噛傷をチェック。あればseizureの可能性が高い(特異度96%、陽性尤度比8.6

・静脈血液ガスで乳酸をチェック。Lac>2.5mmol/Lであればseizureの可能性が高い(特異度97%、陽性尤度比24

  意識消失と転倒は表裏一体であることを認識しておくこと

seizureによる転倒では、鎖骨骨折、肩関節脱臼を合併しやすい

・高齢者の転倒事故の30%は意識消失が関連している。高齢者の転倒を診たら意識消失を疑うこと

  失神では病歴、CHESS、血管、薬剤をチェック

・危険な失神を示唆する病歴:動悸後、労作時、前駆症状なし、仰臥位

CHESSを確認(Congestion:うっ血性心不全、Ht<30%ECG異常、SOB:呼吸困難、SBP<90mmHg

・血管病変(大動脈解離、肺塞栓、急性心筋梗塞)による失神、SAHによる一過性意識障害は忘れられやすい

・薬剤:特にα遮断薬は要注意

 

○外来でフォーカス不明の発熱症例に対して抗菌薬を処方する場合は、血液培養を施行しておくこと。(キノロン系抗菌薬を処方する場合は、結核ではないという確信が必要)

 

○受傷3時間以内の外傷性出血ではトランサミン®1g10分かけてIV1g8時間でIV)を投与すべし。副作用が少なく生命予後改善が期待される(Lancet 2010;376:23-,BMJ 2012;345:e5839

2013.3月前半

 

○高齢者の漫然とした訴え(元気がない、衰弱、反応が悪いetc)では、最良のADLADL低下のスピードに注目して病歴を聴くこと(いつから、何が出来なくなったのかをはっきりさせることが大切)

ADLは食事・トイレ・着替え・内服に注目

食事

「食事は自分で食べていたのですか?」

「食事の準備も自分でしたいたのですか?」

「買い物も自分でしていたのですか?」

トイレ

「トイレまでは自分で行っていたのですか?」

着替え

「着替えは自分で出来ていましたか?」

「洗濯も自分で出来ていたのですか?」

内服

「内服は自分で管理できていたのですか?」

「(できていない場合は)だれが内服を管理していましたか?」

 

ADL低下のスピードの聴取方法

「今朝(昨晩)(半日前)はいかがでしたか?」

「昨日の今頃はいかがでしたか?」

「○曜日(数日前の曜日)はいかがでしたか?」

「先週の今頃はいかがでしたか?」

「今月の初めはいかがでしたか?」

「お正月(お盆、GW)のころはいかがでしたか?」(数か月前の様子がわかる)

 

○アナフィラキシーでは、アドレナリン筋注(成人0.3㎎、体重30㎏未満の小児0.01/㎏)を積極的に実施すること。具体的には蕁麻疹+αがあれば実施すべし

αとは…

気道症状(喉の腫れや痒み)

呼吸器症状(呼吸困難、喘鳴)

血圧低下(ふらつき、一過性意識消失)

消化器症状(腹痛、下痢)

アドレナリン筋注の副作用を恐れているほど多くない(エピペンは、自分で「まずい!!」と思ったら自己注射しなさいと指導されているのだから)

 

○重症患者の治療では、チームダイナミクスが重要

・チームリーダーは

「怒鳴らないこと」

「メンバーの能力を勘案して明確な指示を与えること」

「メンバーの完了の報告を受ける前に次の指示を出さないこと」

「自分の能力を超えたと思ったら、適切な助言を求めること」

・チームメンバーは

「指示を受けたら必ず返事をすること」

「指示を完了したらその旨、声に出して報告すること」

「自分の限界を超えた指示を与えられたら、“できません”と素直にいうこと」

「黙って勝手な行動をおこさないこと(たとえ患者のために良かれと思っても)」

蘇生チームのリーダーがはっきりしなかったら(救急医?専門医?)、素直に「リーダー(司令塔)は誰ですか?」と聞いてみよう

 

○異物誤飲(消化管異物)対応のまとめ

・胃まで落ちていればまずは安心

・食道に停留している場合のPTPとボタン電池は要注意!!(その他の異物で食道に停留している場合は摘出するか、胃まで落ちるのを待つかは数時間以内に判断すればよい)

PTPが食道に停留している場合は摘出が必要(穿孔のリスクがあるため)。胃に落ちていれば経過観察可能

・ボタン電池が食道に停留している場合は緊急(2時間以内)に摘出の必要あり。胃まで落ちている場合は48時間以上停留するなら摘出が必要

・ボタン電池と磁石を誤飲した場合は危険!!早期に提出が必要

 

2013.2月後半

 

○側背部~側腹部(特に左側)は最も外傷に弱い部分である。ぶつけただけでも脾臓・腎臓・肝臓の破裂の危険あり!!

 

○中毒治療の大原則は気道・呼吸・循環の安定化を図ることである。活性炭は利点とリスクを考えて投与を検討すること

・活性炭の適応:①内服量が中毒量を超えており、内服後の経過が短時間である場合、②内服薬物が不明だが、生命に危険が及ぶ場合

・活性炭による有害事象:誤嚥による肺炎を併発すると重篤化する(意識障害時には特に注意が必要)

 

○重症患者の移動は急変のリスクが高いことを認識すること。以下のことを必ずチェック

酸素ボンベ:残量は充分か?

モニター:バッテリーの充電は充分か?

輸液:残量は充分か?

輸液路:外れや捻じれはないか?

ポンプ(シリンジポンプや輸液ポンプ):バッテリーは充分か?外れや捻じれはないか?

チューブ類(気管チューブ・ドレーン類):位置異常はないか?

・急変に備えて患者の脈を触知しておく

 

○急性心不全を診たら、ERでは臨床像と増悪因子を検討しながら治療を開始すること

  臨床像を考える(CS15がの病態が混在することも当然あり得る)

・血圧上昇・肺水腫タイプ(CS1)⇒急速発症。治療は血管拡張薬が主体(ニトログリセリンを)

・体液貯留タイプ(CS2)⇒数日の経過で発症。血圧上昇はそれほど顕著ではないことが多い。治療に利尿薬を用いる

・心原性ショック(CS3)⇒ノルアドレナリン(+DOB or PDEⅢ阻害薬)で循環動態が維持できなければ補助循環のデバイス(IABPPCPS)が必要

・急性冠症候群(ACS)による心不全(CS4)PCIによる血行再建が重要

・純粋な右心不全(CS5)⇒原疾患は何か考えよう。肺塞栓や重症肺気腫はないか?

  心不全の増悪因子を考える

・虚血性心疾患の合併(他の原因では薬剤による治療が第一選択となるのに対して、迅速なPCIが必要となるので、絶対に見逃さない)

・生活習慣の乱れ(塩分の過剰摂取や怠薬など)

NSAIDsの多用(病歴を聴取しないと忘れやすい)

・感染症への罹患(インフルエンザ・細菌感染症など。発熱・頻脈による心負荷の場合と、心筋炎をきたす場合)

・貧血の進行

・他の併存疾患の増悪(肝硬変・腎不全・甲状腺機能亢進症など)

 

2013.2月前半

 

○外傷評価の基本はJATECPrimary Surveyだが、以下のピットフォールに注意

・口腔内に出血がある場合には常に窒息の可能性を考慮すべし(安易に仰臥位にすると窒息の危険あり)。SpO2が良くても、会話ができても気道閉塞の危険を考慮する

・血圧が低下していないからといってショックの可能性を否定しない。SBP<110mmHg,HR>100/,Lac>2mmol/l,BE<-10は要注意

・低体温・アシドーシス・凝固障害は外傷の“死の3徴”ERでは絶対に低体温にさせない配慮を

・女性・小児・高齢者の外傷では虐待の可能性を忘れない

・受傷機転があいまいな場合は心原性疾患による事故・外傷(cardiac cause accident)の可能性を忘れないこと

 

○高齢者における「せん妄+尿閉」では総合感冒薬や鎮咳薬の副作用の可能性を考慮すること。総合感冒薬・鎮咳薬によるせん妄、睡眠導入薬による転倒、NSAIDsによる心不全増悪・腎機能低下はERで頻用される薬剤の副作用として常に覚えておくこと

 

○高齢者の便秘症、安易な浣腸実施にはリスクあり。以下の点を検討すべし

・便秘症の訴えでは、必ず直腸診を実施しよう。便塊を触れないならば、浣腸の効果は薄い(便塊を触れるなら浣腸の効果も期待できる)

・以下の場合は特に浣腸を行うと危険

  憩室炎や虫垂炎、腸管虚血などで腸管壁が脆弱になっていることが予想される場合(腹部CTで腸管壁の腫脹、壁内気腫、周辺脂肪織の濃度上昇が認められる時は危険)

  腸閉塞で腸管内圧の著明な上昇が疑われる場合(絞扼や腫瘍による閉塞など)

・「浣腸後or下剤内服後に腹痛増悪」は危険なサイン(大腸がんイレウス、閉塞性大腸炎、大腸穿孔などの危険あり)

・「排便後に腹痛増悪」も危険なサイン(大腸がんイレウス、閉塞性大腸炎、大腸穿孔、大動脈瘤破裂、大動脈解離などの危険あり)

 

2013.1月後半

 

○激しい嘔吐・吐気の鑑別

・頭(SAH,小脳脳幹の出血・梗塞、髄膜炎)

・胸(急性心筋梗塞)

・腹(腸閉塞)

・代謝性アシドーシス(DKA、尿毒症など)

 

○搬送中は急変を見落とすリスクが高い

・酸素の残量はチェックしたか

・ルートの外れはないか

・モニターだけに頼るのではなく、患者に話しかけ(意識確認)脈をふれて循環動態のチェックを

 

○高齢者の下血or粘血便+血圧低下(+Lac上昇)では腸管虚血(血管の閉塞や非閉塞性腸管虚血:NOMI)を疑うこと

 

○細長い弁状創では創部の壊死をおこしやすい。皮弁側の皮下脂肪を除去して縫合すること(自信がなければ上級医に必ず相談を)

 

2013.1月前半

 

○ERにおける意識障害+体温上昇+頻脈の鑑別診断に強くなっておくこと

・熱中症

・敗血症

・甲状腺クリーゼ

・悪性症候群

・セロトニン症候群

・薬物中毒(アンフェタミンなど)

 

○意識障害症例では血液ガス分析(静脈血でよい)を活用しよう。短時間で多くの情報がもたらされる

・血糖値をチェック

CO2をチェック(CO2ナルコーシスではないか?)

・アシドーシス(と乳酸値)をチェック

・電解質(Na,Ca)をチェック

CO-Hbをチェック(一酸化炭素中毒ではないか?)

 

○ 気管挿管や気管切開管理の患者の呼吸状態悪化では“DOPE”をチェックすること

D: Displacement  「チューブの位置は正しいか?」

O: Obstruction  「チューブは閉塞していないか?」

P: Pneumothorax 「気胸をおこしていないか?」

E: Equipment Failure 「人工呼吸器に不具合はないか?

 

○気管支喘息重積発作で協力が得られる場合は呼気介助(squeezing)を試してみよう。

 

○気管支喘息重積発作やCOPD急性増悪では感染合併と気胸合併を見逃さないこと

 

○呼吸困難症例でSpO2低下が無いという根拠だけで重篤な原因を否定しないこと

SpO2と呼吸数・呼吸様式はセットで評価すること。(気管支喘息発作・COPD急性増悪、肺塞栓、急性心不全症候群など重篤な原因であっても初期には代償性の呼吸数増加によってSpO2は保たれる)

・酸素投与下ではSpO2は保たれていて当然。(酸素リザーバーマスク15L投与下で同じSpO2 100%であってもPaO2 500 torr100 torrでは大きな違いがある)

・呼吸不全の評価には酸素化だけではなく換気状態(CO2蓄積の有無)の評価も大切

CO中毒やシアン中毒ではSpO2が見かけ上高値を示すことがあるので要注意

 

○若年者の尿閉では、脊髄炎(ADEMや横断性脊髄炎)の可能性を考慮すること

 

○筋力低下・横紋筋融解症・心電図異常(QT延長症候群etc)を伴う重症低カリウム血症では、カリウム補正と同時にマグネシウムの投与も行うこと。(血液中には体内の総マグネシウムの2%しか存在しないため、マグネシウム不足があっても血清マグネシウム値は正常範囲内であることが多い)

 

○急速に進行する腎不全をみたら…

・まず腎後性腎不全のチェック(エコーで膀胱の拡張と水腎の有無を確認)

・血清カリウム濃度をチェック

・緊急透析の適応AIUEOをチェック

Acidosis(アシドーシス),

Intoxication(中毒),

Uremia(尿毒症),

Electrolytes(電解質異常),

Overvolume(溢水)

・尿中ナトリウム濃度をチェックして腎性・腎前性の鑑別

・好酸球(血液、可能であれば尿も)をチェックして急性間質性腎炎の可能性を検討

・高齢者で急速進行する腎不全+喀血(肺胞出血陰影)+炎症反応高値の場合は血管炎による腎障害を考慮してpANCAを測定すること

 

○Wernicke脳症の多くでは、症状は軽度の意識変容のみである。眼球運動障害・意識変容・失行のいずれかを認めたら積極的にビタミンB1を投与すべし。血中ビタミンB1濃度を測定してもよいが、結果がわかるのに時間がかかり(1週間程度)、感度・特異度も不明であるため、臨床判断で投与することが大切!!

 

○ステロイドを長期服用している患者の敗血症は診断が難しい(発熱が顕著でない、重篤感がない、臓器投機的な症状が出現しにくい)ため、診断が遅れやすい。非特異的な症状(倦怠感や脱力感など)で受診した場合には心拍数・呼吸数の観察を行うこと(頻拍、頻呼吸を認めた場合は敗血症の可能性あり)。検査閾値は低くすること。

 

○外傷では、末梢冷感+頻拍(cool,tachy”)があればショックがあると認識することが大原則!! しかし、ショックでも頻拍をきたさない患者群に注意すること

・高齢者(代償機能の低下)

・薬剤(β受容体遮断薬など心拍数を低下させる薬剤)内服患者

・ペースメーカー留置患者

・低体温の合併

・血管迷走神経反射の合併

・脊髄損傷の合併

代償性に頻拍となるべき状況で、頻拍にならないことは早期の循環動態破綻をきたす危険が高い。「頻拍でないからショックではない」と油断しないこと

 

 2012.12月後半

 

胸部症状があって12誘導心電図において、V1で高いR波を観察したら後壁梗塞の可能性を考えること。ST上昇などの変化を認めにくいのが特徴

 

○心電図で高いT波を発見したら①急性心筋梗塞のhyper acute Tの可能性と②高カリウム血症の可能性を考慮すること

 

○低体温症の原因として偶発性低体温症のほかに、①重症敗血症、②甲状腺機能低下症、③副腎クリーゼ、④何らかの内因性疾患(脳卒中etc)で長時間動けなかった等の可能性を考慮しよう

 

○喀血では量が少量でも窒息の危険がある。気道の状態には細心の注意を払うこと

 

○大量輸液が必要な状態(敗血症、出血性ショック、非ケトン高浸透圧症候群etc)では、輸液をためらってはいけないが、大量輸液によって凝固障害や再灌流障害が惹起される可能性があることも念頭に置いておく必要がある

 

○フェニトイン内服患者における眼振を伴うふらつきではフェニトイン中毒を疑って血中濃度をチェックすること

 

○脱臼・骨折転位の整復やヘルニアによる腸管脱出の還納、成功のカギは患者をリラックスさせること。鎮痛・鎮静法をうまく活用することが大切

 

○気管挿管を決断した時は、できなかった場合のプランを3つくらいは考えておくこと。

例)

・麻酔科医へ予め連絡する「先生、挿管できなかったら助けてください!!

LM(laryngeal mask)LT(laryngeal tube)

・ビデオ喉頭鏡やファイバーを用いる

・輪状甲状靭帯穿刺

 

○迅速導入気管挿管(RSI: Rapid Sequence Intubation)を行う場合は必ず拮抗薬の存在を知っておくこと。気管挿管に失敗し、呼吸抑制や循環抑制をきたした際に必要となる

・ドルミカム⇔アネキセート

・エスラックス⇔ブリディオン

・フェンタニル⇔ナロキソン

 

2012.12月前半

 

○胸痛患者の心電図でⅡ・Ⅲ・aVF誘導にST上昇を認めた場合は次の2つの点について確認しよう。

・右室梗塞合併の可能性はないか? 右側胸部誘導をチェック、V4RでのST上昇があれば右室梗塞合併の可能性が高い。ニトログリセリンは血圧低下をきたすため使用しない。輸液量は多目に

・大動脈解離の可能性はないか?解剖学的な関係上、大動脈解離では右冠動脈に解離が進展することが多い。背部痛や血圧左右差、大動脈弁逆流の所見をチェック

 

○脳幹梗塞による中枢性めまいでは、めまい以外に神経症状を伴うことが多いが、詳細に確認しないと所見を見逃してしまう。

・チェックすべき神経所見は「はなここうふく」と覚えておく

「は」Ⅷ脳神経

「な」Ⅶ脳神経

「こ」Ⅴ脳神経

「こう」構音障害

「ふく」複視

・帰宅させる前に、tandem gait(あるいはsemi tandem gait)を確認しよう。これが出来ないめまいは要注意

 

○高齢者の転倒、背後には内因性疾患が潜んでいる。発熱・脱水・めまい・脳梗塞・失神などを必ず確認すること

 

○体調不良時には血管迷走神経反射や起立性低血圧をきたしやすい

ERで経過観察中に生あくびをして徐脈、血圧低下をきたしたら血管迷走神経反射の可能性大→「咳ばらい」をさせる。それでも改善しなければアトロピン1㎎を静注

・下痢、嘔吐、脱水、ふらつき、失神などの主訴の患者を帰宅させる場合は仰臥位と立位(できれば5分後くらいまで)での血圧・心拍数の変化をチェックしておくとERから出た後の体調悪化を防止できる

 

2012.11月後半

 

○小児の異物誤飲(消化管異物)の大半は経過観察で良いが、以下の点は覚えておこう

PTPとボタン電池は要注意!!

PTPが食道に停留している場合は摘出が必要(穿孔のリスクがあるため)。胃に落ちていれば経過観察可能

・ボタン電池が食道に停留している場合は緊急(2時間以内)に摘出の必要あり。胃まで落ちている場合は48時間以上停留するなら摘出が必要

・ボタン電池と磁石を誤飲した場合は危険!!早期に提出が必要

 

○精神疾患で入院中の患者の突然の失神、血圧低下、頻脈、SpO2低下などの症状では必ず肺塞栓症の可能性を考えること。(精神疾患患者のPEは結構多い!!

 

○知っていると便利な頭痛の問診シリーズ

・危険な二次性頭痛を探る問診:突発・増悪・最悪(3つのいずれにも該当しない場合は危険な二次性頭痛の可能性は低い。)

・片頭痛の可能性を探る問診:拍動性、持続時間4-72時間、片側性、吐き気、頭痛で何もする気が起こらない(4項目以上ならば片頭痛の可能性大)

・副鼻腔炎を疑う頭痛:感冒後に頭痛が治らない、下を向くと頭痛

・低髄圧症候群による頭痛:座位・立位で頭痛→仰臥位になると頭痛が軽快

 

○重症患者が救急搬送されて、あわててパニックになってしまったら…“サルも聴診器”の合言葉を思い出そう。

「さ」酸素

「る」ルート確保

「も」モニター装着

「ちょう」超音波準備

「しん」心電図(12誘導)

「き」胸部X

内科救急におけるベットサイドでの初期治療&原因検索は、ここに集約されている!!

 

○高齢者の嘔吐→吐血という病歴でMallory-Weiss症候群?と思ったら、必ず嘔吐の原因を検索しよう。背後に腸閉塞はないか? 小脳出血はないか?

 

○頻脈性不整脈の治療で同期電気ショックを実施する場合、放電ボタンを押して実際にショックがなされるまでに時間がかかる場合がある(最大1-2秒程度、除細動器がQRSを認識するのに要する時間)ことを知っておこう。放電ボタンは押したままでいること。

 

○一時的な胸痛で、胸痛改善時の12誘導心電図で前胸部誘導(V2V5.6)で~陰性T波や二相性T波を認めた場合は、LAD近位部狭窄の可能性が高い。現在症状がなくても、心筋酵素の上昇がなくても循環器医へのコンサルテーションが必要(Wellens’syndrome

 

○ベッド上で、のたうち回る程の激しい胸痛の場合は大動脈解離から考えること。急性心筋梗塞で、のたうち回る程の激しい胸痛をきたすことは非常に稀である。

 

○虫垂炎について

・急性虫垂炎を疑った場合は、食欲について問診しよう。食欲がある急性虫垂炎は非常にまれである。

・急性虫垂炎の典型的な経過は、腹痛(心窩部痛)→食欲低下・嘔気→圧痛→発熱→WBC上昇である。どの時点で受診するかは患者によってさまざまなので、症状の経過を問診することはとても重要

 

○高血圧と肺水腫が急速に進行するタイプの急性心不全症候群(CS1)ではニトログリセリンスプレーの噴霧(12puff)が有効。劇的な症状改善が期待できる。ただし、大動脈弁狭窄症が基礎疾患の急性心不全症候群ではニトログリセリン使用は慎重に少量から使用すること

 

○頭痛+動眼神経麻痺症状(複視、眼瞼下垂、散瞳)ではSAHや未破裂脳動脈瘤の検索が必要。頭部CT→異常を指摘できない場合はMRI(MRA+FLAIR)の順番で画像の評価を

 

○高齢者への座位のままで下肢を温めるような処置(入浴やホットパック使用etc)は失神をきたすリスクがあり

 

2012.11月前半

 

○高齢者の呼吸困難ではⅢ音を聴く努力をしよう。聴取されれば原因は心不全である可能性が高い

 

○高カリウム血症に対する治療の緊急性は血清カリウム値よりも心電図所見で決まる

・徐脈やwide QRSなどの心電図所見が認められれば直ちにカルチコール1-2Aを静注

・心電図異常がない場合は、マニュアルを参照しながら治療を開始する余裕あり(GI療法やアーガメートゼリー内服など)

 

○高アンモニア血症の肝硬変以外の原因を知っておこう

・門脈-体循環シャント(portal-systemic shunt)

・尿毒症や腎障害

・細菌感染症

・消化管出血や便秘

・バルプロ酸内服

 

○眉毛の外側1/3を強打した外傷を診察した時は、必ず視力をチェックしよう。視力低下があれば外傷性視神経症や視神経管骨折の可能性あり。可能であればRAPD(relative afferent pupillary defect)もチェックしてみよう

RAPD:たとえば右眼の視神経症がある場合…

①右眼にペンライトで光を当てる

②その後に左眼にペンライトで光を当てる(→左眼は直接対光反射で縮瞳、右眼も間接対光反射で縮瞳)

③さらにその後に再び右眼にペンライトで光を当てると…最初、右眼は縮瞳しているが、光を照らしているにもかかわらず、瞳孔が散瞳してきてしまう。(間接反応で縮瞳していた右瞳孔が、視神経症で明るさを感知できないため)

 

○尿路結石と尿潜血の関係は微妙なもの…。尿潜血(-)だからといって尿路結石の可能性を否定できるわけではないし(感度84%)、尿潜血(+)だからといって尿路結石と診断できるわけではない(特異度48)。やっぱり尿路結石を疑ったのなら腹部エコーが大切!!(腹部大動脈瘤と水腎症をチェック!!

 

○高齢者の入浴中の溺水では、必ず心・血管疾患を検索すること。(日本では高齢者の入浴中の心血管イベントや心停止が海外に比べて多い)

 

○アナフィラキシーを疑った場合は、アドレナリン0.3mg筋注が大原則。ただし、β受容体遮断薬を服用している患者ではグルカゴン(1-5mg)を静注すること(グルカゴンの作用により、細胞内でcAMPが活性化されβ受容体を介さずにβ作用が発現

 

2012.10月

 

○大動脈の手術歴や大動脈瘤がある患者の吐血・下血・喀血では大動脈と消化管、大動脈と気管(気管支)の瘻孔の可能性を疑うこと(→大動脈造影CTでの評価が必要)


 

○向精神薬・抗うつ薬による薬物中毒では必ず12誘導心電図をチェックしよう。軸変位やQT延長を認める場合は要注意


 

○ERBDチューブや胆管ステントが留置されている患者の発熱では腹痛がなくても胆道感染を疑うこと


 

○尿路結石発作かと思う患者を診たら…

・腹部エコーで腹部大動脈瘤をチェック、水腎症をチェック(水腎症を認めない尿路結石発作は何かおかしい)

・脈をとろう→AFがあったら腎梗塞の可能性あり。LDHが上昇しているならば造影CTも必要

60歳以上で初発の尿路結石発作は非常に稀、ほかの疾患を検索しよう


 

発熱患者を診たら…

・脈をとろう→HR>90は要注意

・呼吸数をはかる(もしくは呼吸を真似してみよう)→呼吸数>20は要注意

脈が早いor呼吸が早い発熱は元気そうに見えてもsepsisの初期の可能性あり



○痩せた長期臥床高齢者の腸閉塞?のCTでは…

・恥骨スライスまで撮影して閉鎖孔ヘルニアをチェック

・十二指腸水平脚まで腸管内容物貯留が著明ならSMA症候群を考える


 

○失神の患者では

・高齢初発の失神は予後不良、慎重に対応を

CHESSを確認(Congestion:うっ血性心不全、Ht<30%ECG異常、SOBSBO<90mmHg)一つでも該当するなら慎重に対応を


 

慢性腎不全患者の増悪ではAIUEOをチェック

Acidosis(アシドーシス), Intoxication(中毒), Uremia(尿毒症), Electrolytes(電解質異常 特に高カリウム血症), Overvolume(溢水)があれば緊急透析が必要


 

○徐脈の患者を診たら…

・まず高カリウム血症をチェック(血液ガス分析で)

・心筋梗塞の可能性をチェック

・低体温の可能性をチェック

・症状がなくても完全房室ブロックは要注意!!


 

心肺停止蘇生後の患者では脳蘇生を考えること

①呼吸管理:過換気を避けETCO2 35-40(PCO2 40-45)を目指す、SpO2>94%を維持できる範囲で出来るだけ酸素濃度を下げる 

②循環管理SBP>90mmHgを目標に、まず細胞外液(生理食塩水・リンゲル液)1000-2000mlの輸液、それでも維持できないなら血管収縮薬(イノバン、ノルアドレナリン)使用 

低体温療法VFからの蘇生後でGCS<8の場合は適応となる。4℃の細胞外液(生理食塩水・リンゲル液)を20ml/kg輸液しブランケットで冷却、痙攣やシバリングが出現したらホリゾンやドルミカムを使用、経過中は血糖とカリウムを頻回に確認する

ECGSTEMIを認めたら緊急PCIを実施する


 

○SAHを疑ったのに頭部CTで異常が指摘できない場合は…

・大脳縦裂とシルビウス裂を再度読影しなおす

MRI(FLAIR+MRA)の必要性について上級医と相談